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心臓シミュレーション
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心臓シミュレーション
心臓は全身に血液を循環させる、生命の維持にとって最も重要な臓器の一つです。当プロジェクトでは、心臓を最初のシミュレーション対象として研究開発に取り組んでいます。

■心筋細胞モデル
■心臓モデル
   ●力学現象
   ●電気現象

心筋細胞モデル
心臓は非常に多くの心筋細胞から構成されています。さらに、心筋細胞は大きく2種類の心筋細胞に分けられています。
一つは血液を全身に循環させるポンプ機能に重要な収縮力を発生する固有心筋です。もう一つは心臓の律動的な拍動を形成するのに重要な興奮伝導系の特殊心筋です。

京大グループでは、心筋細胞モデルとしてKyoto Modelを開発しました。Kyoto Modelは、様々なイオンチャネル・トランスポーター・各種細胞機能(筋小胞体、収縮要素、ミトコンドリアなど)が実装された包括的な心筋細胞モデルです。Kyoto Modelでは、異なる機能を持つ心筋細胞モデルとして、固有心筋のひとつである心室筋細胞モデルと、特殊心筋のひとつである洞房結節細胞モデルの2種類の細胞モデルを開発しました。

心室筋細胞
心室筋細胞
洞房結筋細胞
洞房結筋細胞

洞房結節細胞モデルでは心臓のペースメーカー電位の発生をシミュレーションでき、その結果は実測値と良く一致します。
また、心室筋細胞モデルには心筋収縮機能が実装されており、細胞の電気的な膜興奮と心筋収縮を同時にシミュレーションできるモデル(興奮収縮連関モデル)となっています。

細胞シミュレータをJavaアプレットで実行する
実行にはJava VMが必要です。Sunのサイトから入手してください。

現在までに、心室筋細胞モデルには、心肥大などの病態に関係の深い 細胞容量調節機能 、詳細な ミトコンドリアモデルを含むエネルギー代謝系機能、 心臓の神経支配の影響を理解するのに重要な β受容体シグナルトランスダクション機能 、などの細胞機能要素が追加されています。
現在、より包括的な心筋細胞モデルの開発を目指して、様々な機能要素の実装が進められています。
Kyoto Modelの概略図

心臓モデル
心臓全体の拍動は、心筋が電気的刺激を受けて収縮することで引き起こされますが、それは電気生理学現象、力学現象、電気現象などが相互に作用しあうことで成り立っている複雑なメカニズムで動いています。
新しい観測方法が開発されつつある一方で、活動心臓の観測にはいまだに大きな制限があり、不整脈や心不全などの病態に関してはまだ明らかにされていない部分が多くあります。
そこで、精密な心筋細胞モデルに基づいたコンピュータ・シミュレーションによって心臓収縮メカニズムの解明に貢献できれば、心臓疾患の治療や新薬の創出にも大きな意義があります。

力学現象
当プロジェクトでは、左心室をたくさんの小さい要素に分割し、各々の要素の動きから心室全体の収縮を計算するアプローチを取っています。
まず、人間胸部のMRI画像から左心室部分を抽出し、それを要素ブロックに分割して左心室の3次元形状モデルを作ります。各要素に相当する心筋細胞は、刺激によって興奮し、カルシウム濃度の上昇によって収縮力が発生します。この挙動はKyoto Modelに基づいて計算できます。心筋細胞の収縮による心室全体の力学的変形は、有限要素解析法を用いて計算できます。そのとき、収縮による形状変化は心筋細胞の生理学動態に影響を及ぼすため、心室全体の力学モデルと細胞モデルとの間でフィードバックして、密に連成計算する必要があります。この計算過程を短いタイムステップで繰り返すことで、左心室の周期的な拍動をシミュレーションすることができます。
左心室の3次元形状モデルの構築
当プロジェクトでは、生体シミュレーション開発プラットフォームDynaBioS®を用いて、左心室拍動シミュレーションシステムを開発しています。
また、心筋モデルの生成インターフェイスや心室駆出率計算などの周辺ツールも整備を進めています。 これまでに、要素の心筋繊維方向を変えて実験を行った結果、心筋細胞の繊維方向の空間分布が左心室の駆出率に大きな影響を与えることが確認できました。また、心筋梗塞によって一部の心筋の収縮が止まった状態の拍動実験も行っています。
今後は、収縮モデルの改良や刺激伝導系との連携などを実現し、心不全などの病態解明への利用を目指して、より精度の高いシミュレーションシステムを開発していきます。


左心室拍動シミュレーションの実行結果

心筋梗塞シミュレーションの実行結果

実行結果を3次元データで見る(Gfa ファイル)
上記ファイルの表示にはAVS GfaPlayerのダウンロード(無料)が必要になります。

電気現象

心臓における興奮収縮は、個々の心筋細胞に蓄えられた静止膜電位という電気的なエネルギーが細胞膜内向き電流によって連鎖反応的に開放される興奮伝播によって実現されます。多くの不整脈は虚血や心不全などの電気的な異常を契機として発生します。臨床や動物実験では、興奮伝播現象を事細かに調べたり、マクロレベルとミクロレベルの電気的な連係を詳細に検討したりすることはできませんが、心臓の電気現象に焦点をあてた興奮伝播シミュレーションは、まさにそういった問題を一度に解決できるものと言えるでしょう。

心筋組織は無数の心筋細胞が長軸方向に連結した心筋線維と、その間を埋める細胞外液で構成されますが、それらを要素ごとに分けて電気回路化することで、興奮伝播が可能な仮想心筋組織が実現されます。
実心筋組織に対応した仮想心筋組織の構築
電気現象シミュレーションの応用として、QT延長症候群や心室頻拍などの遺伝性不整脈のシミュレーション(滋賀医科大学呼吸循環器内科 堀江稔先生らとの共同研究)、プルキンエ線維網による心室内正常興奮・再分極様式の再現や心臓突然死の原因となる頻脈性不整脈のシミュレーション(国立循環器病センター研究所 中沢一雄先生らとの共同研究)なども行うことで、常に臨床的な病態も見据えた心臓シミュレーション研究を行ってきました。
現在、当プロジェクトではKyoto Modelを心筋ユニットとして、それらをDynaBioS上で多数結合した、有限要素法や有限差分法による心臓モデルの構築と興奮伝播のシミュレーションを行っています。今後は、さらに力学系の興奮収縮メカニズムとの連係を深めるとともに、不整脈と非常に関連の深い心不全の病態解明も目指す予定です。

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